幼なじみの彼と彼女
「梓、帰ろ」

祥太郎は少しずつ歩いて梓に近付く。

梓は黙って頷く。

その様子を見て武紀は

「じゃあ」

と言って立ち去った。



「…阿倍野、ごめん。
今日は俺が梓を連れて帰るから」

祥太郎の言葉に紀香は頷いて手を振る。



「…後ろに乗れよ」

紀香が駅に向かって歩いて行くのを見つめて、祥太郎は梓を見もせず、呟いた。



本当は。

『あいつに何て言われたんだ?』

そう聞きたかったけど。

聞けば。

ヤキモチと思われそうで。

聞けなかった。
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