幼なじみの彼と彼女
「…何かあった?」

顔を上げると、優しい拓海が覗き込んでいた。

思わず流れる涙。

拓海はため息をついて

「バカな男どもにイジメられた?」

そう言って梓の頭をそっと撫でる。

「拓ちゃん、ごめん」

梓は俯いて手でゴシゴシと涙を拭いた。

「謝る必要なんて、ないよ」

拓海は何度も梓の頭を撫でた。

「祥太郎から、ずっと聞いているよ」

「えっ…?」

意外な言葉だった。

いつも無視されているのに?

「…祥太郎はね。
本当はいつも梓ちゃんといたいんだよ。
でも、あの年頃はどうも男女を意識して、突っ張っちゃうから」

拓海は優しく微笑んだ。

「祥太郎の事、悪く思わないでね。
あいつはあいつなりに考えてるから」

拓海はそう言ってバイクに跨がった。

「また今度、ゆっくり話しようよ」

梓はその言葉に頷いた。
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