幼なじみの彼と彼女
「祥太郎?」

レースが終わり、帰りの車の中で総一は助手席に座る祥太郎に声をかけた。

いつの間にか涙が溢れていて。

自分が叱り飛ばしたからかと総一は焦った。

「そーちゃん」

涙声の祥太郎はタオルで顔を覆った。

「恋愛って難しいね。
…このままじゃ、お互い良くないって思ったから、別れようって言ったんだ」

総一は祥太郎の発言に納得した。

梓も一緒に連れて帰ろうと思ったのに、梓は見に来てくれた友達と帰ると言って帰ってしまった。

「そっか…」

ふと、過去の自分を祥太郎に重ねた総一はそっと祥太郎の頭を撫でた。



「ごめん、今日だけ泣かせて」

今日だけ泣いて、明日からは前を向いて進むから。

自分の決めた道を真っすぐ歩いていくから。



そしていつか。

この別れもいい経験だったと振り返られるくらいに強くなってみせる。



祥太郎はそう思った。
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