幼なじみの彼と彼女
楽しそうに見えた高校生活。

しかし4月下旬にそれは起こった。



「脳腫瘍?」

ある日の夕方。

久々に祥太郎が家にやって来た。

梓は祥太郎の顔を覗き込む。

「うん…」

祥太郎の顔はひどく落ち込んでいた。

「手術、出来ないんだってさ」

祥太郎の父親が脳腫瘍でいつ消えるかわからない命だという。

「…兄ちゃんだけでなく父さんまでも」

祥太郎は唇を噛み締めた。

梓はどう慰めていいのかわからずにただ、祥太郎の話を聞いていた。

重苦しい空気が二人を包む。

「ま、俺が落ち込んでも父さんが治る訳じゃないから」

祥太郎は顔を上げて今にも消えそうな笑みを浮かべた。
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