幼なじみの彼と彼女
真っ暗な部屋に一人、ベッドで仰向けになる。

静寂が自分を押し潰しそうな感じがする。



父、賢司とは全く血が繋がっていない。

それでも。

今まで育ててくれた親だから。

賢司に引き取られなかったら、今の自分はない。

本当の息子、拓海と同じように育ててくれた。

それを思うと胸が痛い。



やがて。

下から母の声がする。

母も本当の母ではない。

本当の母の姉になる。

けれど、まるで本当の母に見えて仕方がない。



「祥太郎…あれ、寝てるのね」

ドアが開くのと同時に母、彩子はそう言ってベッドの上で寝たふりをしている祥太郎を確認してドアを閉めた。



祥太郎は心の中で何度もゴメン、と呟く。

こんな、泣いた後の顔を両親にはとてもじゃないけれど見せられない。

寝たふりでごまかした。
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