START to a show
俺は正直ファッションのことにあまり興味がない。
ただマーケティングには興味があるし、やりがいも感じる。
マネージメントなんて最初はあまりノリ気じゃなかったが、意外に合ってる気がする。
次のページをめくると、今度は紫乃のインタビュー記事になった。
―――『御堂さんから見て、佐久間さんはどのような子供でしたか?』
―――『彼はとにかく華やかで、人を引っ張るタイプでした。
何でもソツなつこなす、いわゆるオールマイティな…人ね。
彼がすることには誰も反対しなかった。ガキ大将って言う意味じゃなく、誰もが彼に憧れていた。私もその一人
彼はいつだって、私を守ってくれた』
何だあいつ、俺のことをそんな風に思ってたのか…ってか意外にまとも。
いや、違うな。
だいぶ修正加えたな、これ。肉まんがあんまんに化けた。
ちらりと記者を見ると、記者は慌てて視線を逸らす。
俺は次のインタビューに視線を向けた。
―――『昔からモデル体型で背が高くて、顔もすごく整っていたし、バレンタインのときは女の子にたくさんチョコを貰ってました』
そのたくさんのチョコに紛れて、一つだけ匿名のチョコクッキーが混じっていた。
白いオーガンジーの素材に、同じ色合いのシルクの布で包まれていて、淡いブルーのリボンが掛かっていた。
確かめなくても分かる。そのチョコレートが紫乃からのだって。
裁縫は得意だったが料理はからきしだった紫乃が、バレンタインの時期になるといつも誰かの為に一生懸命になってチョコレート菓子を作っていたのを思い出す。
その‟誰か”が誰であるか、分かったのがこの年。
最初で最後に貰った甘ったるい香りがするチョコレートフォーチュンクッキーを割ると、
“晃希、ずっとずっと大すき!”
と書かれたメッセージが出てきた。そのメッセージに戸惑った俺。
十年前の話だが。
でもずっとずっと……好きだったのは
俺の方だった。