実験→作用→その結果



「真城、ちょっと。」


ココはとある大手飲料水メーカー………の、支店である研究所。

大まかに言えば味覚に関する実験や分析をしている。


「はい。」


呼ばれた私は撹拌の終わった試験管を撹拌機から取り出す作業を中断して、いそいそと声の主に駆け寄った。

声の主にしてこのラボの主であり、目下私が助手として勤める主の小宮山清良さん。

私より五個ほど年上の彼は博士号を持つほどに優秀な頭脳の持ち主で、その世界では天才と称されている。

優秀なのは頭脳ばかりではなく、その容姿も。

怜悧な月光を思わせる切れ長の双眸。

透き通るように白い肌。

それと対照的な烏の濡羽色の髪。

常に遠くを見詰め沈黙を守る彼は、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。


――――というのが周囲の一般的な評価でしょう。


実際の清良さんはおしゃべりじゃないにしても普通に喋る。

寡黙なのは不眠不休で実験に明け暮れていて慢性的に寝不足だからだ。

ぼーっとしている。

もしくは実験に思いを馳せているかのどちらか。

透き通るような白い肌も超が付くインドア派…というか、いっそインラボ派である賜物だ。

たまに外へ出ては太陽やら北風に瀕死になっている……とっても脆弱。

まさに温室育ちならぬラボ育ち。


研究に対しては驚愕なまでの知能を発揮するのに、シャバ事情には愕然とするぐらいの無知を披露する。


そんな“バカと天才紙一重”を地で行く人と知りながら、うっかり好きになってしまった私も変人なんでしょうか。

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