実験→作用→その結果
私の返事など聞かず、寧ろやる以外の選択肢は無いとばかりに清良さんは私を壁に引っ張っていった。
「一先ず体温変化も見ておくか。とはいえおあつらえ向きに体温計の用意もないから、とりあえずコレ。」
持ってと言われて、水温計を渡された。
そのついでに外視温計でピピッとな…。
標的に向けてボタンを押すだけでサーモセンサーで中の温度まで計れる優れ物。
「36・7か。眠りっぱなの子供みたいな体温だな。」
独り事のように言って手帳に書き込む清良さん。
それは昼下がりに単調な仕事でうとうとしていた所為なのか、すぐ先の未来にあるシチュに期待しての所為なのか、自分でもよく分からないけれど……ほっといて頂きたい。
「じゃいくぞ。」というムードもへったくれもない掛け声がして、耳元でドンッ☆という音が上がった。
ぅんぎゃぁぁぁぁぁぁぁ。
分かっていた状況なのに、私は心臓をバクバク言わせてプチパニックに陥った。
多分顔は真っ赤で、涙目になってしまっている筈。
何故って、お綺麗な清良さんのお顔が未体験領域に接近しているから。
シミどころかホクロもない肌はこの至近距離でも滑らか。
モノクロに紅差す薄目の唇も色っぽい。
いやでもそれだけではなくて―――
「紅顔反応、っと…体温は、うん。上昇。」
サーモセンサーと水温計をチェックして、私をマジマジ覗きこんだ清良さんは空いた手で器用に観察結果を書き込む。
「で?どうなんだ?心理状況的には。」
そんな事を奥面もなく訪ねてくる清良さんは絶対鬼畜だと思う。
しかし彼に隠顕は許されない。