その顔を見せないで

「俺は見てるよ」

甘い声が脳内を溶かしそう。

「船山さんは字が綺麗で、仕事が丁寧で、真面目で、恥ずかしそうに笑う顔が可愛くて……」

「可愛くないです」

その腕から逃れる方法を探していると

「いつも俺の顔を見てる」

そう言われて動きが止まり
背筋が寒くなる。

バレてた。

「船山さんってメンクイ?」

ズバリ言い切る工藤さん。

私は顔を真っ赤にしてうつむいてたら


「彼女を離せ!」

大きな声が階段の上から響く。
国枝さんは怒りで顔を真っ赤にさせ、工藤さんに怒鳴っていた。

でも工藤さんは口元を少し上げて笑い

「残念だね国枝君。船山さんはメンクイなんだって、君の顔より俺の顔の方が好きだってさ」

堂々とそう言った。


鬼畜だ……この人。






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