からくりの向こう
ゼンの唇が、私の首筋に落ちる。
口づけではなく、私をその心に刻むかのように動かない。
「ごめんね」
ごめん。
何度も謝り、うな垂れるゼンの頭を抱えた。
私とゼンは、結ばれない。
運命なんだ。
いくら愛し合っていても、結ばれることはない。
だって私は…。
「忍びだから」
最後にもう一度、ゼンの頭を強く抱きしめ、私は壁から背を離した。
忍同士は結ばれてはならぬ。
「それなら2人で遠くに行こう‼」
ゼンの誘(いざな)いが、甘い蜜となり酔狂したのもほんの一寸。
私は忍び。
忍びとして生きていくんだ。
愛を、胸に忍ばせて…。