からくりの向こう
くるりと壁がまわり、次の瞬間、私は見物客の後ろから飛び出した。
驚きの歓声と拍手。
しかし、見物客はマジックの類いだと思っている。
日々の鍛錬のなせる技なのだ。
ここは忍者村。
忍びが生き残るために創り上げた、桃源郷だ。
「リッちゃん、次の回、変わってくれない?」
「うん、別にいいけど」
「ごめんね、急に呼び出されて」
後輩のくノ一が、iPhoneをかざす。
どうやら彼氏に呼び出されたらしい。困り顔の嬉し顔だ。
「時代だな…」
昔とは違い、それなりに順応して忍びも生きている。
あれから五年。
もし今だったら、違っていたのだろうか?