からくりの向こう


「よし、ガンバるか‼」

過去を断ち切るように立ち上がった。

今日も20人、満員御礼だ。

中には、忍者の格好をしている子供たちもいる。

自己紹介を済ませ、からくり扉の実演を終えると。

「じゃ、誰かやりたい人ー?」

こういう時はだいたい、前列の子供が我先にと手を上げるのだが、今回はおとなしめだ。

代わりに。

スッ。

真っ直ぐ手が上がった。

珍しい。大人の、しかも男性がやりたがるなんて。

「じゃ、そこの…」

笑顔で、1番後ろから伸びる手を指差した。

男性が立ち上がる。

そして、ゆっくりと近づいてくる。

私から目をそらさずに。


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