【完】強引に、キス


「音亜、ここ座って」


悠雅に指定された場所は、高そうな刺繍のされたソファー。


悠雅のご両親ってお医者さんかなんかでお金持ちなのかな?


人の家をジロジロ見渡すのは失礼なのはわかっているけど…ソファー以外にも一般家庭にはきっと無いだろう。


高そうな家具や装飾品が沢山あって…施設育ちの私にはこないだのホテル以上に縁がないかも知れない……。


----“住む世界が違う”

チクっ


ふいにその言葉に真実味が増し胸が痛んだ。


悠雅は、私の過去を噂で聞いただろう。もし本当に悠雅がすごい家庭の人間なら、私はきっと、一緒にいられない……。


そんな事を考えていると、さっきのスーツの男性が机にティーカップを置いてどうぞと差し出してくれた。


ほのかに甘い、アップルティーの香り。

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