【完】強引に、キス
「この間の年末も、父親に連れられてパリに行ってた。知り合いのデザイナーの誘いで有名なコレクションを鑑賞してたんだ。ほんとは音亜も連れて行きたかったけど……ごめんな、嘘ついてて」
今まで知らなかった本当の悠雅を沢山しれて嬉しかった。
「ううん、悠雅は苦しいって思うかもしれないけど、今までの出逢いは全部、今後に必要な人脈だから大切にしなきゃ」
話をしていると、スーツの人が部屋に入ってきた。
「悠雅様、すみません。そろそろお送りした方がよろしいかと」
悠雅は時計を見て私の手を握ると、
「そうだな、繚辺、頼む」
悠雅が繚辺(マトベ)と呼んだこの人は、悠雅の小さい頃からお世話をしてくれている人で、お兄さんの様な存在らしい。
「はい、すぐに」
繚辺さんは返事をすると部屋から出て行き、私もブレザーを着て帰る準備をした。