【完】強引に、キス
「あ、はーい」
声をかけてきたのは、施設で育つ私達のお母さん役、光子(みつこ)さん。
「家庭訪問の話だけど、断るも受けるも、音亜の好きにしなさい。同級生の目、気になるでしょ?」
「え、何でわかったの?」
私が問いかけると、光子さんは「私はこれでも、あなた達の母親のつもりです」と優しく笑顔で語りかけてくれた。
「わかった。明日、長谷やんに返事だしとくね」
話が終わり、光子さんが部屋を出て行こうとしたので「ありがとう」と言うと歳に似合わないくしゃくしゃの笑顔を作った。
………母親のつもり。
光子さんはいつも絶対に母親とは言い切らず、つもりをつける。昔それを問いただした時があって、答えは
私も他の皆も、母親はいる。私はその母親の変わりに皆を育てるお手伝いをしてるの。
皆に自分のエゴで“母親”というものを押しつけたくない。
と、言われた。
多分、光子さん自身母親になりたいけど私達の事を考えてくれてるんだろうな。
「そろそろ認めてもいいのに。私達は皆、ちゃんと母親だと思ってるよ」