【完】強引に、キス
「……あの、始めまして。音亜です」
悠雅の前に行き、重利さんに頭をさげる
「なんだって……名前、音亜と言うのか?」
「はい。五歳の時、母と父が事故にあい亡くなりました。私もその時の衝撃で記憶喪失にあい、覚えているのは、音亜という名前とお母さんの声だけです」
そう言うと、重利さんは顔を真っ青にする
「確か…孫の名前も、音亜と言った…」
「出生記録を調べたんですが、血液型はA型。誕生日は6月29日です」
「本当か…本当なのか櫂堂の息子…」
重利さんが慌てると、嶺さんが体を支えた
「重利様、那波様のお嬢様と同じです。目と口元が似ていることから、確率も低くないかと」
「私も調べましたが、御蔭様のDNAがあると考えていいと思います」
繚辺さんと嶺さんの言葉で、重利さんは確信したのか、私の名前を呼ぶ
「音亜………音亜よ……」
重利さんは椅子から立ち上がり、私に近づいてくる