【完】強引に、キス
カチャ
ティーカップをソーサーに置き、静かに語り始める
「那波は、この家の一人娘だった。昔から家のせいでまわりから距離を置かれる事で、御蔭の血を憎んでいたんだよ。それで、20になった時、突然連れてきたのは、この世界とは全く無関係の男やった」
「娘を理解できなかった私は、大反対してしまってね。そしたら、那波が妊娠していることを口にしたんだ」
「…………それが、私?」
「ああ。反対した私に反抗し、家を捨てると言って出て行ったんだ」
寂しそうに話す重利さんの目が、胸を締め付けた
「私も頑固だったから、娘をほおっておいたんやけど、相手の男は律儀に、検診の度に手紙を送ってきてな…。エコー写真と一緒に、娘の報告を受けていた」
「産まれてからも、娘と孫の映った写真を送ってきてね、娘には秘密だったらしい。…ところがある日から、ぷつりと連絡が途絶えて2ヶ月程たってから、事故にあった事を嶺が調べて知ったんだ」
お父さん………お母さんと重利さんの事、大切に思ってたんだね………