【完】強引に、キス

「事故の被害がかなり大きいと聞いていてね、……まさか孫が生きているとは…本当にすまなかった」


必死に頭を下げる重利さんに、私は悠雅と目をあわせて手を握って話し始める


「重利さん、私は素敵なお父さんとお母さんから生まれたんですね。それに、こんなにカッコイい素敵なお爺さんも持てて、嬉しいです!」


「音亜……」


「私は今、とても大好きな人と出逢うことが出来ました。だから、謝らないでください。ある意味、あなたの行動があって、お母さんがお父さんのいるこっちに来てくれたからこそ、悠雅と出会えたんだと思います」


「きっと……会社のパーティーなどで出逢っただけなら、私は悠雅を好きにはならなかったし、悠雅も、私を好きになってくれなかったと思います」


悠雅は繋ぐ手を、指を絡ませて強く握り直す


「………ッ…ありがとう…」


重利さんの、涙を流して笑顔を出す顔はとても大きな会社の社長とは思えない、ただの良きお爺さんだった。

< 216 / 247 >

この作品をシェア

pagetop