【完】強引に、キス


「俺さ、昔からずっと女に見た目とか自分の地位とかで告白されつづけてきた」

「うん」

「俺の中身も知らねえくせに、一目惚れとかで毎日の様に告白されて……さっき告ってきた奴も、自分の地位をあげる為におれに寄ってきてるのがわかってるから、断った」


私の肩に頭のせてるから、五十嵐の顔は見えないけど声が弱々しくて、きっと私にはわからない苦労とかがいっぱいあったんだと声と腰にまわる手で伝わる


「なあ、まだ俺のこと怖い、か?」

「え?」


五十嵐が私の肩から頭を離し、体ごと私に向いた。腰にあった手が私の頬に添えられる。

「俺が手に入れたいのは音亜だ。そろそろ限界。こんな近くにいるのに、なんも手だせないなんて…」


段々五十嵐の顔が接近してきて、五十嵐の前髪が私の鼻にあたる


「だっ…ダメッッ」


私がとっさに顔を背けると、五十嵐は残念そうにし、私を抱きしめた。


「ちょっ」

「…悪い。焦った。今は、これで我慢する。いつか、いつか必ずお前からキスさせてやる……」


私がキスを拒んだ理由。それは五十嵐が嫌いだからじゃない。


キスをしたら、今の五十嵐とのこの時間がなくなりそうだから。


私は弱虫だ。ほんとは五十嵐の彼女になりたい。今すぐキスして、私だけに見せる笑顔を見せてほしい。


嫌い、苦手、そんな対象でしかなかった五十嵐に私はいつの間にかこんなに惹かれ始めていた。


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