守る壁ドン
守る壁ドン

「水野さん!?」

金曜の夜、合コンに遅刻して現れた彼は、私を見てとても驚いたようだった。
一方の私は、彼が私の名前を覚えていたことに驚いた。
二、三週間前に一度会っただけなのに、ちゃんと顔と名前を覚えているなんて、さすがプロだ。
私に向けて、こんばんは、とニッコリした彼に、私も、こんばんは、と返したが、名前は呼べなかった。
中谷さん。私も覚えていたけど、なんだか恥ずかしくなってしまって。

「二人、知り合い?」
「はい、うちの店のお客さんなんですよ」

友人にそう答えた中谷さんは、私と並んで座っている真帆と彩に、中谷です。美容師をしています、と言い、二人もそれぞれ短く自己紹介をした。
中谷さんは、空いていた私の正面の席に腰を下ろし、回ってきた飲み放題メニューを受け取った。

「なんていうか、偶然ですね!」

メニューから顔を上げ、中谷さんが言った。

「本当ですよね。びっくりしました!」
「僕も、かなりびっくりしました!」

鼻の頭をグーで擦りながら、ちょっと困ったように笑う。

「中谷が僕だってよ。似合わねえなぁ!」

幹事の山岸さんに笑われ、中谷さんは、うるさいですよ!と返した。
男性三人は同じ高校の出身で、中谷さんだけ一年後輩だそうだ。
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