守る壁ドン
「いつもは僕じゃないんですか?」
「仕事中だけです。普段は俺ですね。あっ、すみません」

通りかかった店員さんに中谷さんは烏龍茶を注文した。それを見て、すかさず真帆が反応する。

「お酒、飲まないんですか?」
「俺、全然飲めないんですよ」

中谷さんが苦笑まじりに答えると、

「へぇ~、意外ですね~!飲めそうなのに~!」

真帆の向こうから彩が言った。
真帆も彩も中谷さんの到着の前後で、目の輝きと声のトーンが明らかに変わった。
三対三の合コン。男性側の幹事の山岸さんから、すごいイケメンが来ると聞き、三人共とても期待していた。
しかし、山岸さんと共に現れた男性は、失礼ながらイケメンとは言い難い容姿で、彩はこっそり、帰りたい、とつぶやいていた。

「どこの美容室で働いているんですかぁ?」

さっきまで端っこでスマホを弄っていた彩がすっかり本気モードだ。鼻にかかった甘え声と語尾が伸びるのが、その証拠だ。

「今度行ってもいいですかぁ?ちょうどイメチェンしたいと思ってたんですぅ。中谷さん、相談に乗ってくれますかぁ?」
「もちろん。俺で良ければ喜んで」

中谷さんの爽やかな笑顔に、彩はとろけそうになっている。
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