おまけの一個



「礼音?」

えらく真面目な顔で

「棗」

抱き寄せようとするのを何とか振りほどこうとすると

「ちょっと暴れんな」

ドンッ!

壁を背にして礼音に挟まれた。

「お前…朝のこと気にしてんだろ?」

「……」

「阿呆!」

「阿呆って!なんなのよ」

「俺を信用してへんからやろ、この阿呆」

「し、信用してるわよ!信用してるに決まってるじゃない」

礼音こそ私を信用してないみたいじゃない。

「じゃあ何でふてくされてる?」

「……」

大輔君にはバレてなくても礼音には分かってるのね。

「わ、私が女ってだけの話しよ。それも極々普通の」

「はぁ?」

キョトンとした顔の礼音。

そりゃそうだよね。

礼音は私の顔色や言葉や雰囲気で何かあったとかは分かるけど、女心の奥にある理不尽さとか脆さまでは分からないよね。

逆に私に男心が分からないのと一緒で。


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