おまけの一個
「ヤキモチ妬いただけだよ」
「ヤキモチ?やっぱり気にしてたんか?」
「そう。いくら礼音があのお客様の誘いにOKすることはないって百も承知はしていてもね、やっぱり見ちゃうとヤキモチの一つも妬きますよ。心が痛いですよ。だって私は」
「俺より年上やしどんくさいし口は悪いし」
「ち、ちょっと礼音」
それは言い過ぎじゃないでしょうか?
「ほんまに阿呆やな」
「い、痛い!離して」
いきなり両頬っぺたを引っ張られた。
「俺は美容師で技術売ってるだけやねん。媚び売ってるんとはちゃうねん」
それは分かってるけど…
美容師だって客商売なんだから。
「そりゃ仕事やから笑いもするし話しもする。それだけやん。それ以上何にもあらへん。ま、たまには何か勘違いしてるのもいるみたいやけど」
「そんなの分かってる」
「そやから何も心配すんな」
そんなこと充分すぎるくらい分かってる。