本当に好きな人【企画作品:完結】
***
夜の9時。
……ガチャガチャ。
マンションの玄関が開閉され
『ただいま…美華奈。
おっ、美味そうだな?』
1人の男性がネクタイを緩めながら
テーブルに置いていた
皿のラップを軽く剥がすと
煮物の人参を摘まんで口に入れた。
「………お帰りなさい。
志龍(しりゅう)さん。
……お疲れさまでした。
すいません…迷惑かけて。」
私はソファーから立ち上がると
『コレ美味いな。』
と、さらに大根を摘まんで口に入れた
男性の元に駆け寄って頭を下げた。
すると
『…おい、美華奈…頭を上げろ。
それに、毎日謝るな。
俺はNAMIKAの専属マネージャーだぞ?
事務所スタッフの人数が少ないから
報道の後処理も俺の仕事の内だ。
だから、迷惑かけてるなんて
余計な事を考えるな。』
と、言って
泣きそうになる私の顔をあげさせた。