真実アイロニー【完結】

何で、俺もこんな事言ってしまったんだろう。


まだ二ヶ月そこらしか、一緒にいないのに。
会話したのだって、最初の少しだけなのに。



でも、何故か言葉にしてしまいたかったんだ。


小早川を好きだって。


ちゃんと、言葉に。



「……」


まだ、言葉を失っている小早川。



「小早川が琥珀君だけを想ってるのは知ってる。どうにかなりたいわけじゃない。
だけど、こういう気持ちのヤツもいるって事を知っておいて。
だから、さ。もう切らないで」



小早川の頭に手を置くと、ぽんぽんとした。


視線を伏せる小早川。
強張った顔が緩む事はない。



「切りたくなったら、俺を頼って」


そう、呟く。



「な?」



微かに微笑むけど、小早川は俯いたまま無反応だ。
だけど、本当に少しだけだったけど。


コクンと、頷いた。

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