真実アイロニー【完結】
「何読んでるの?」
「……太宰治」
「文学少女だね。小早川は」
「ただの暇潰し」
「携帯小説から、太宰治までとか幅広いし」
「恋愛小説は苦手だけど」
「ふうん、そうなんだ」
拒絶する様子は見られない。
告白したから、もっとあからさまに嫌な態度されると思ってたのに。
それが少しだけ意外だった。
「ハッピーエンドなんて嫌い」
「……」
「どうやって結ばれるか、ってそこまでを書く作品が多くて…結ばれた後の事を書かない作品の方が多いでしょ?」
「まあ、そうだな」
「結ばれた後の方が、本当は色々あるのに」
「……」
「そこで、ハッピーエンドなんてよく言えるなって」
「それじゃあ、小早川にとってのハッピーエンドって何なんだ?」
「……私にとっての?」
そう尋ねると、小早川は動きを止めて真っ直ぐに前を見る。
考えている小早川の髪の毛が、微かに風で揺れた。
静かに口を開く。