真実アイロニー【完結】
淡々とそう呟いた。
小早川にとって、琥珀君が全てで、かけがえのないモノであるから。
どれだけ、苦しんだのか。
俺には到底理解なんて出来そうもなかった。
一度、軽く笑うと俺は小早川の頭を撫でる。
「それでも、今すぐはダメだからな」
「……」
「あ。小早川には連絡先、教えておく」
「え?」
俺は携帯番号をポケットに突っ込んであった適当な紙にサラサラと書く。
そして、それを小早川に強引に渡した。
「何かあったら夜中だろうと電話かけて来いよ」
「……」
手の中にある紙に視線を落とすと、小早川は黙った。
頷く事も、返事が来る事もなかったけど、それでもいい。
そんな事を期待して連絡先を渡したわけじゃないから。
連絡が本当に来なくてもいいんだ。
それがある事で、誰かが側にいるって思ってくれたら。
俺は立ち上がると、「それじゃ、あんま遅くなる前に帰れよー」と声をかけて校舎に戻った。