真実アイロニー【完結】


授業中、小早川を盗み見る。


やっぱり頬杖をついて、外を眺めていた。


その姿は異色だった。


周りは半袖で、下敷きで仰ぐ者もいれば、汗を掻いてる者いて。
なのに、彼女は長袖を着て汗一滴すら掻かずに涼しい顔をしている。


確かに彼女だけを見れば、今がまだ暑さの残る季節だなんて感じない。


気にするな、そっちの方が難しい。



「あ、早乙女先生」


職員室に戻った俺にそう声をかけてきたのは、宇津木先生だった。
前よりも固さがなくなった気がする。


それがここに馴染めている証拠なのだと思うと、素直に嬉しかった。



「今日も暑いですね」

「そうですね」

「プールに飛び込みたくなりますね」

「ふふ、早乙女先生らしいです」


俺と一緒に笑った宇津木先生だったけど、急に真面目な顔付きになると口を開く。



「……あの。小早川さんに何かあったんですか」

「え?」



小早川?
その名前が出た瞬間、心臓が一度ドクリと鳴った。
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