真実アイロニー【完結】

「さっき、校長室に入ってったんです。何かあったのかと」

「校長室、ですか?」

「ええ。早乙女先生も知らないんですか」

「……いえ、何も」

「そう。何か問題起こしたとかじゃないと思うけど…」

「……聞いてみます」

「何かあれば職員会議でちゃんと報告されると思うし、気にし過ぎないで下さい。
早乙女先生なら知ってるかと思って聞いただけなので」

「はい」



そう言うと、宇津木先生はぺこりと頭を下げて自分の席へと戻って行った。
机に向き直るが、さっきの宇津木先生の言葉が頭の中で何度も木霊していた。



……校長室にいた?
小早川が?


教頭先生に窺おうか、そう思ったけど宇津木先生が言った様に何かあれば必ず報告される筈だ。
それならば、それを待つべきだ。


だけど、さっきからそればかりが支配して仕事が手に付かない。


小早川に直接聞いてみるか。
放課後、桜の木の下に行ってみよう。


いるかわからないけど、人のいる場所では聞く事なんて出来ない。


帰りのHRでも、小早川は普段通りだった。

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