真実アイロニー【完結】


相変わらず外を眺めていたし、無表情だったし。
何を考えてるかなんて、検討もつかない。


たまに触るピアス。
それで、ああ、琥珀君の事考えてるのか。
そう、思うだけで。


小早川が出たのを確認した俺は、一度職員室に戻って教材を置いてから外へと向かった。
桜の木の下で彼女が来るのを待った。



だけど、彼女はその日来なかった。

いや、それ以降桜の木の下に来る事はなくなった。
ただの一度も。


たまに本を読むと言っていたのに、それすらもなくなっていた。
俺はというと、毎日の様に彼女を待った。


だけど、来なかった。

ちゃんと挨拶をすれば、素っ気ないけど返答は来る。
変わった様子なんてないように見えるのに。


彼女が琥珀君の事を忘れるなんて有り得ない。
だから、桜の木の下に来ない理由がいくら考えても思いつかなかった。


小早川に何があったのか、わからないままいつの間にか一週間が過ぎていた。


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