真実アイロニー【完結】
「早乙女先生、少しいいですか」
「え?」
放課後の職員室。
人も疎らなここで、背後から教頭先生に呼ばれて思わず素っ頓狂な声が出た。
少しだけ難しそうな顔をした教頭先生は、俺を応接室へと移動させる。
他の人には話せない内容なのか。
小早川の事だろうか。
……いや、きっとそうなのだろう。
向かい合って座ると、俺は真っ直ぐに教頭先生を見据える。
教頭先生はゆっくりと口を開き切り出した。
「小早川さんの事なんだけども」
「はい」
至って普通に返答をしたけど、心の中ではやっぱりと思った。
俺はじっと教頭先生の言葉の続きを待つ。
「……近い内に引っ越す事になりまして」
「え!?」
想像もしてない事に、俺は目を見開く。
思ってる以上に俺の口からは大きな声が出ていた。