真実アイロニー【完結】
離れても。


生徒指導室に小早川を入れると、彼女の前に座った。


陶器の様に滑る肌。
真っ黒で艶々してる髪の毛。
薄く色付く唇。


一切笑わない彼女は、まるで人形の様だった。



「早速本題に入るけど…今日、転校について聞いた」


彼女の肩がぴくりと揺れる。
だけど、俺と視線を合わせようとはしない。



「俺を避けてたのってこれが理由か?」

「……避けてません」

「だって、桜の木の下にもいつもいなかっただろ?」

「手続きに色々時間が必要だったので」

「それにしても、何で言ってくれなかったんだ。
わざわざ口止めまでして」

「……」



この質問に口を噤むと、小早川はすっと右耳のピアスに手を伸ばした。
それに触れた瞬間、ハッとして手を元の位置に戻す。


< 152 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop