真実アイロニー【完結】
離れても。
生徒指導室に小早川を入れると、彼女の前に座った。
陶器の様に滑る肌。
真っ黒で艶々してる髪の毛。
薄く色付く唇。
一切笑わない彼女は、まるで人形の様だった。
「早速本題に入るけど…今日、転校について聞いた」
彼女の肩がぴくりと揺れる。
だけど、俺と視線を合わせようとはしない。
「俺を避けてたのってこれが理由か?」
「……避けてません」
「だって、桜の木の下にもいつもいなかっただろ?」
「手続きに色々時間が必要だったので」
「それにしても、何で言ってくれなかったんだ。
わざわざ口止めまでして」
「……」
この質問に口を噤むと、小早川はすっと右耳のピアスに手を伸ばした。
それに触れた瞬間、ハッとして手を元の位置に戻す。