真実アイロニー【完結】
「責めてなんかいないからな。
少し驚いただけ。それと、転校先でうまくやっていけるか心配でもあるから」
「……」
「俺は性懲りもなく小早川を好きだけどさ、小早川が琥珀君を好きなのは理解してるし」
「……」
そう言った途端、小早川は更に顔を俯かせて険しい表情を浮かべた。
それはすぐに直ったけども。
眉間に少しだけ皺を寄せたままなのは変わらない。
明らかに様子のおかしい小早川。
こうも不自然だと不安になる。
出来る事なら、笑顔で見送りたいし、送り出しても大丈夫だなって思いたい。
それは俺の傲慢で我儘ではあるけど。
ただ、彼女は琥珀君中心に回るから。
全てにおいて、琥珀君が優先されるから。
きっと、ここにいる時と同じ様に誰とも関わろうとしないのだろう。
それは自己防衛の為でもあるんだろうな。
誰とも関わらなければ、誰も離れて行かないから。