真実アイロニー【完結】
黒く塗り潰してしまったのは。
「おはようございまーす」
「ああ、おはよう」
「あ、早乙女先生ッ!」
朝の登校時間。
校門を抜けた俺の横に走ってやって来たのは、昨日話しかけて来た一人、ゆるゆるパーマの小島さんだ。
今日も彼女の肩では緩いパーマがかかった髪の毛が揺れていた。
ふわふわとして、女の子らしい。
「朝から会えるとか、運命みたくないですかーっ?」
「あはは、そうだね。小島さん」
笑いながら返すと、彼女はどこか不服そうな顔を見せる。
少しだけ口を尖らせて、俺を上目遣いで見つめた。
「もう、子供だと思って適当に返してるでしょ。先生」
「そんな事ないよ」
「絶対うっそおーーっ」
「あはは、困ったな。どうしたら機嫌直してくれる?」
「うーん、何だろう」
小島さんは腕を組んで考えている。
それに、ふふっと笑みが零れた。
そんな姿が子供っぽいんだけど、なんて口が裂けても言えないな。これは。
「んじゃ、後で聞くから考えておく様に」
時間がかかりそうだと思ったから、一旦考えさせるのを中止させて職員玄関へと向かう。
はーいと元気な返事をしてから、いつまでも手を振ってる彼女はやっぱり幼いと思った。
職員玄関から入り、靴を履き替え様とした時だ。
目の前に立つ女子生徒、その後ろ姿に息を呑んだ。