真実アイロニー【完結】
君の全てを聞いた時。
俺は何も言えなかったんだ。
綺麗事なんか、とてもじゃないけど言えなかった。
誰にでも平等に明日が来るから。
時が解決してくれる。
浮かんでは消えていったどこかで聞いた事がある様な、そんな言葉達を思い浮かべると、一人で情けなく笑った。
何か声をかけたくて、近付いた癖に。
その全てを知って、何も言えないだなんて、教師失格だ。
「先生、絵の具ってね。
凄いたくさんの色があるよね」
そうやって、君は目を細める。
「けどね、そんな綺麗で鮮やかな色も黒が入ると、全てが塗り潰されちゃうの。
キラキラしてた、私の色達もたった一滴の黒の所為でさ」
クスクスと、どこか他人事の様に話す君。