真実アイロニー【完結】

一歩、一歩。

確かに、ゆっくりと君に近付いてく。



そんな俺に気付いた君が、桜からゆっくりと俺に視線を向けた。


無表情で、何も映していない、その瞳。



「小早川さん、おはよう」


視線が絡んだと同時に、俺はそう口を開いた。
だけど、俺の顔を見るなり小早川さんは視線を伏せるとまた桜を見上げる。



「早いね、いつもこんな早く来てるの?」


返事を待たずに、いや、きっと無視をされたのだろう。
だけど、懲りずに声をかける。


「……」

「桜、好きなの?」


じっと黙って、桜を見つめているから好きなのかと思い、そう尋ねる。
だけど、小早川さんは静かに俺に視線を向けると一言。



「……キライ」


そう、告げた。
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