真実アイロニー【完結】
見つめるその先に。


その翌日も、俺は同じ様に桜並木に向かった。
その翌日も。また翌日も。
二週間経っても、欠かさずに。


だけど、小早川さんがいたのは最初だけで、それ以降見かける事はなかった。


教室に入ると、小早川さんはいつも通りのスタイルで、外を眺めている。
そして、誰とも関わらない。


声をかけるタイミングもなくて、朝登校途中おはようと声をかけるぐらいだった。
もちろん、無視されるんだけど。



だから、それは突然だった。



「早乙女先生」


職員室で、提出物をまとめているとそう声がかかって俺は振り向く。
後ろに立っていたのは、美術の久嶋先生だ。


「久嶋先生、どうしたんですか」


体を向けて、俺は久嶋先生の言葉を待った。


「おたくのクラスの小早川さん、どうにかなりませんか」

「え?」


小早川さん?

話についていけない。
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