真実アイロニー【完結】

上手下手でなく、描かない事が問題なのだろう。
再度、久嶋先生に「すみません」と謝罪の言葉を告げると、その画用紙に視線を落とした。


久嶋先生はお願いしますね!と言いながら、踵を返して自分の席へと戻って行く。
小さく息をつくと、その画用紙を裏返した。


「……」


“2-E 小早川玲織奈”


綺麗な文字で書かれた名前。


その名前を、指でなぞる。


明日、声をかけてみよう。


そう決めて、俺はまた作業に取り掛かった。


翌日。

学校に着いてすぐに桜並木に向かってみたけど、案の定小早川さんの姿はなかった。


だよなあ。
いないよなあ。

仕方ない。
校舎に戻って、HRの時に残る様に言うか。


そう思い、踵を返した視線の先には小早川さんが歩いていた。


見付けた!
すぐに俺は小早川さんの元へと走って行く。
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