真実アイロニー【完結】
「絶対だからなー!」
それは聞こえてる筈なのに、小早川さんは無反応のまま校舎の中へと入った。
もう姿は見えないのに、俺は暫くそこに立って彼女が消えた方を見ていた。
少しだけ、進展しただろうか。
少しずつ、彼女に近付いて行こう。
俺はさっきの彼女の発言にホッとしていた。
理由を聞いて成程なと思った。
モデルを描けって授業なら、きっと彼女はきちんと完成させただろう。
だけど、描き合おうって授業だから描かなかったんだ。
後で久嶋先生に話しに行こう。
思った以上に、小早川さんは普通の子で、そんな避ける程の子でもなかった。
きっと。
周りがそうさせてしまったんだろう。
だから、彼女も諦めてしまったんだろう。
そう、思った。