真実アイロニー【完結】
職員室に入り、先生方に挨拶して自分の席に荷物を置くと、久嶋先生の元へと向かった。
「おはようございます、久嶋先生」
「早乙女先生、おはようございます」
「あの、小早川の件なんですが」
そう切り出した途端、久嶋先生の表情が変わる。
「今朝、描く様に話をして来たので大丈夫だと思います。
期限っていつですか?」
「今月末です」
「そうですか、わかりました。必ず完成させます」
「お願いします。あの小早川さんがちゃんと提出するとは思えないですけど」
「……」
ふんっと鼻で笑われて、言い返しそうになったけどどうにか拳を握り締めて堪えた。
口で何を言っても、説得力なんてない。
だから、小早川さんがちゃんと作品を提出すれば全て解決する。
どこまで、疎まれているんだろう。
問題児。
だからって、小早川さんとろくに関わろうとせずに否定するのはあんまりだ。
久嶋先生に笑顔で一礼すると、俺は自分の席へと戻った。
そして、一度息をつく。
……今日、放課後来てくれるといいけど。