真実アイロニー【完結】
授業中、小早川さんを盗み見たがいつも通り頬杖をついたまま外を向いていた。
俺の話なんか、聞いてるのかわからない。
外に何があるのか。
ふっと、視線を外に向けてみるけど俺にはわからなかった。
彼女の目線に立って、彼女と同じモノを見て、彼女と同じ感動を得てみたかった。
放課後。
久嶋先生から手渡された彼女の白紙の画用紙を持つと、俺は美術室に向かった。
いるかな。
そう思いながら、俺は美術室の扉を開ける。
俺のそれは杞憂で終わった様だ。
彼女は美術室にちゃんといた。
窓を開けて、枠に腕を乗せると教室の時と同じ様に外を眺めていた。
外から風が入り込み、彼女の綺麗な黒髪をなびかせる。
揺れた髪から覗かせた彼女の右耳に光る、それ。
……校則違反の赤のピアス。