真実アイロニー【完結】
「……見たい」
「え?」
だから、そう声をかけられて、最初何の事なのかわからなかった。
画用紙から小早川さんに視線を移すと、言葉の続きを待った。
いつもみたいな鋭い視線でない、彼女の視線。
「先生のウサギ」
「……俺のウサギ?」
「爬虫類に似てるウサギ」
「……」
いや、俺は必死に本気でウサギを描いてるんだ。
自信を持って提供したとしても、何故か周りがウサギと取ってくれない。
だけど、彼女が興味を示してくれたのが嬉しかった。
「ちょっと待ってね」
俺は画用紙を裏返すと、可愛い可愛いウサギの絵を描く。
耳は長くて、毛がもふもふとしてて、くりっとした愛らしい瞳。
どうしたって、可愛い動物のウサギ。
よし、出来た。