真実アイロニー【完結】
それでも、俺は彼女を知りたかった。
小早川さんに何があって、どうしてそこまで全てを諦めてしまっているのかを知りたかった。
「……知って、どうするんですか」
冷ややかなその言い方。
拒絶する様な、言い方。
それでも、俺は止めなかった。
「俺は小早川さんの力になりたい」
「無理ですよ、そんなの」
「どうしてそう決め付けるんだ」
「……それは、先生。貴方が大人だからですよ」
「……」
「先生も私から遠ざかった大人達と一緒なんですよ」
そう言って、小早川さんは目を伏せる。
画用紙を手に持ち、立ち上がると扉に向かった。
扉に手をかけた時、こっちに一度体を向けると
「これ、提出して来ます」
そう言った。
「……俺は違う」
俺が言った言葉に、扉を引く彼女の手が止まる。
だけど、こっちを見る事はない。