真実アイロニー【完結】
「結城君は今日もお手伝いかい?」
「あ、早乙女先生」
宇津木先生から俺に視線を移すと、彼はニッコリと笑った。
手には宇津木先生から渡されたクラス分のプリント用紙。
「偉いねえ」
「まあ、学級委員ですし」
「結城君が推薦される理由はなんとなくわかるよ」
「ええー。結構めんどくさいんですよ。
放課後遊べなくなるし」
「あはは。まあ、遊びたい盛りだよなあ」
「そうなんです、俺には不足してるんです!愛が!」
「……愛?」
鼻を膨らませ、彼は「はい!」と言って力説し始める。
「ピースになるには、ラブが必要なんですよ!」
「なるほどねぇ」
「ほら、早乙女先生も同調しない。結城君、チャイム鳴るわよ」
思わず、唸ってしまった俺と結城君に宇津木先生が割って入った。
結城君は「失礼しまーす」と元気よく言ってから、職員室を後にした。
「結城君はいつも元気ねえ」
「本当です」
彼がいなくなった後、宇津木先生がぼそっと呟くのに俺も頷いた。