真実アイロニー【完結】
――――――……
その翌日も、小早川の態度が変わる事はなかった。
相変わらず、俺が話しかけても無視だし。
それでも、もう構わなかった。
俺がそうしたいんだってわかったから。
俺の感情とか抜きにして、一人にしたくないって言う教師としての気持ち。
だけど、その日は少し違っていた。
妙に教室内がざわざわとしていた。
ホームルームを始めようと、教室に入った俺が席に着く様に促す。
一応、クラスメイトは席に着いたものの、話しが収まる事はない。
こそこそと、何か噂話をする様に小早川を見ては耳打ちを繰り返す。
少しだけ眉根を寄せた後、
「ほら、ホームルーム始めるから静かにー」
そう、声を張り上げた時だ。
「人殺し」
誰の声かはわからないが、そう響いた。
一斉に静かになる教室内。
「……今の、誰だ?」
俺がそう尋ねるが、誰も挙手しようとしない。
教室内はピンっと張り詰めた空気で満ちていた。
小早川は相も変わらず、窓の外を眺めては無表情だ。