生意気な彼女
「ハルカちゃん…っ!」
グイッ、と引っ張られて気づく。
目の前の信号は、赤。
「あ………」
「どうしたの?」
わたしの腕を掴んでいるヨウジくんが、大丈夫?と顔を覗き込んできた。
「……ごめんね。ちょっと、ボーッとしちゃってた」
あはは、と笑ったわたしの腕を解放したヨウジくんは、やれやれといった表情で、
「気をつけて」
と言うと、わたしの頭をぽんぽんと叩いた。
「………」
突然の出来事に、わたしの頭は真っ白になる。
い、ま………ヨウジくんが、……。
数秒後。
状況を把握したわたしの顔と体が、冷たい空気の存在を忘れてしまったんじゃないかというくらいに熱くなった。
ヨウジくんの手が、わたしの頭を。
こんなの、初めてだ。