生意気な彼女
ヨウジくんにしてみたら、大したことじゃないのかもしれない。
でも、わたしには。
今のわたしには。
「ここ渡ったらすぐだからね」
「………」
顔を真っ赤にしたわたしは、ヨウジくんの言葉にコクリと頷くことしかできなかった。
「なんだか危なっかしいなぁ」
そう言ってふぅっと小さく息を吐き出したヨウジくんは、わたしの右手を取ると、
「渡りきるまで掴んでて」
と、そのまま自分の左腕に置いた。
目の前の信号が青に変わる。
「行こう」
「あ、……っ」
ためらう隙もなかった。
慌ててヨウジくんのコートの袖を、きゅっと握って。
赤に緑に、青、白、ピンク。
キラキラと眩しいほどの光の中。
ドキドキして。
どうしよう、どうしよう、って。
そう思いながら、ヨウジくんについていく。