生意気な彼女
「…………ぁ」
ふと、何処かで目にした光景が頭の中に浮かび上がってきた。
腕を組んで、ぴったりと寄り添うように。
離れた場所にいたわたしにも、寒いね、って会話が聞こえてきそうな、そんな光景が。
あぁ、そうだ。
あの日の、サクラとヨウジくんだ。
「………ハルカちゃん?」
ピタリと足を止めたわたしの名前を、不思議そうに呼んだヨウジくん。
もう、渡りきっちゃったし。
掴んでいたコートの袖を離すと、さっきまでの熱がゆっくりと冷めていく。
少しずつ冷静さを取り戻していくわたしの中で思い出される感情。
罪悪感と、嫉妬。
「ハルカちゃん?どうした……うわっ」
ヨウジくんの首に巻かれていたマフラーを引っ張ると、無防備だったヨウジくんの顔が、グンッと近くなる。
「びっ、くりした。なに?どうしたの?」
すぐ近くにあるヨウジくんの顔。
今でもまだ、大好きな人。