生意気な彼女
胸の奥が、ザワザワと騒がしい。
そのわけを、わたしはちゃんと理解してる。
理解してて、言うんだ。
「わたしと、キス、……してください」
「………え?」
「キス、してください…っ」
「………ハルカちゃん?」
胸が苦しいのは、ずっと前から。
胸がズキズキして、チクチクと痛むのも。
もう、ずっと前から。
この痛みから解放されるには、どうしたらいいんだろう。
ヨウジくんを諦めるには、どうすればいいんだろう。
ずっと悩んでた。
いっぱい苦しんできた。
だから言ったんだ。
「好きです」でも、「好きでした」でもない言葉を。
なのに。
「どうしたの?ハルカちゃんらしくないよ」
ヨウジくんは、マフラーを掴んだままのわたしの両手首に触れると、困惑した表情でそう言った。