生意気な彼女
「ハルカちゃん……」
ヨウジくんに名前を呼ばれたけど、のどに何かがつかえてるみたい。
返事もできなかった。
視線をあと少し上に向ければ、ヨウジくんの表情を見ることができるのに。
わたしの視線は、下へ下へと落ちていく。
「…………」
何か言おうとしたのか、ヨウジくんがスッと息を吸い込んだのがわかったけど。
それは、言葉にはならずに、ただ白い息となって吐き出されただけだった。
胸がチクチクと痛む。
わたしたちの吐く息は、白くて。
からだは、すっかり冷えてしまっていて。
あの言葉の意味を。
涙のわけを話して。
ヨウジくんを早く解放してあげなくちゃ。
「………あの、……わたし、………」
「ゆっくりで、いいよ」
「……うん」